青木雅代(南方)
青木雅代(あおきまさよ)
所属:南方道場
職業:主婦
入会年月日:2004年11月
有段者であるご主人の勧めで入会。高島、南方道場を中心に週2~3回の稽古に参加されています。継続的な努力により伝統型の試合では常に上位入賞を果たすなど、前向きな稽古姿勢は後輩の良きお手本になっています。またイベントではいつもスタッフとして協力していただき道場を支えてくれています。高島道場では職場での経験を活かして中高校生の指導も手伝ってもらっています。
~自分の内面と向き合った昇段審査~
●楽しみながら稽古…師範からの一言
緑帯になり二年経った頃、藤島師範に、「茶帯の審査を受けましょう。」と言われ、頭の中が真っ白になりとても驚いたことを今でもはっきり覚えています。私は今までに、二度、左目が見えなくなり、網膜剥離の手術をしていました。元々、網膜そのものが弱く、強い衝撃や振動、強い光などで網膜が破れやすい状態にあり、過去には、十年以上続けたハンドボールやスキーも、二度目の手術を境にきっぱりとやめてしまったこともあったからです。そのような理由もあり、茶帯以上の審査を受審するということは、私にとって非常に危険なことであり、皆無なこととして受け止めていました。
又、その頃の私は、昇級を目ざすということよりも、「目の悪い自分が再びスポーツが出来る」という満足感と喜びが先に立ち、自分のペースで楽しみながら道場に通っていたように思います。その為、師範から頂いたあの言葉に人並み以上に驚き、あの言葉が忘れることの出来ない一言になったのです。



●茶帯を目指して…上達を感じられない日々に悩む
私の中の茶帯以上の先輩方のイメージは、とても強く、道場に来られるとその場の空気が引き締まり、一緒に稽古をするだけで緊張し圧倒され、物怖じしない内面から滲み出る風格に自然と魅了されるような特別な存在でした。
そんな先輩方を見てきたので、審査を受けるからには中途半端な気持ちで受けることは出来ないと思うようになり、初めて帯の色を意識するようになりました。まず、ポイントを絞ったかなりの練習量が必要だと感じ、今までの数倍、練習量を増やしました。しかし、練習をしても自分のイメージ通り体が動かず、上達どころかむしろ後退しているようにさえ思え、出来ない自分が情けなく、腹立たしく、帰りの車の中で涙が止まらないことも多くありました。自分自身ではどうしようもないほど不安が募り、思い切って師範にその思いを伝えてみると、「その気持ちはよく分かる。僕も中川先生から、『今やってることがすぐに結果に繋がるとは限らない。数ヵ月経って結果が出る場合、一年経って結果が出る場合もある。』とよく言われていた。いつになるか分からないけど、結果に繋がる日が来るから、大丈夫です。」と言ってくださいました。その日から不安はあるものの、師範の言葉を心の支えにし、今出来ていることと出来ていないことを明確にし、時間がかかること意識すればすぐ直せることを整理し、今まで以上に意識的に練習に取り組むようにしました。



●昇段を目指して…自分の内面と向き合う
審査当日の三人組手では頭への衝撃がないように配慮してくださり、心配だった組手も何とか無事に終えることが出来ました。その後、再び師範から、「十二月に昇段審査を受けましょう。」という言葉を頂き、「昇段」という言葉に大きな戸惑いがあったものの、思い切って受審をすることにし、その日に向けて準備を始めました。
この昇段審査を受けるにあたり、テーマとして、「自分自身の内面と向き合う」ということを掲げることにしました。その理由の一つに、昇段レポートに「空手道と人間形成」という課題があったこと。もう一つの理由として、昇段審査の前に型試合があったことです。
レポートを書くにあたり、道場に入会した時から今までのことを振り返ってみると、初めての審査で「道場理念」を覚えたことを思い出しました。
●道場理念…自分自身にあてはめて
昇段審査を期に初心に戻り、この道場理念の意味を改めて考えてみようと思いました。 アスリート道場が大切にしている、「人としての正しい生き方を求めること」「人と社会の為に生きることの出来る高い人間性を養うこと」その具体的な考え方が解説の中に書かれており、自分自身をこの文章にあてはめてみることにより、自分自身と向き合うことを余儀なくされたように思います。
又、審査直前に型試合があり、自分を追い込むには良い機会だと考え、試合に出場することにしました。この試合では、誰かに勝ちたいとか、何位を目ざしたいとか、一切思うことがありませんでした。それよりも、「こんな型がしたい。」とか、「自分が出来ていない部分が、少しでも先生が教えてくださっているイメージに近づくようになりたい。」など、気が付けば自分自身に心が向いていたように思います。
これらの事柄から、「自分自身の内面と向き合う」ということが、自然なこととして昇段審査に向けてのテーマになったように思います。

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●4か月間の稽古と生活…感情のコントロール方法を学ぶ
それから約4ヶ月間、仕事、私生活、空手の練習とすべてに於いて常に自分自身と向き合う生活を意識して送るようにしました。感受性の強い私は人の言葉で心が揺れることが多く、ストレスも受けやすい生活を送っており、「このままではいけない。なんとかしたい。」と考えていました。
そんな中、審査当日のことを想像しながら練習を重ねていると、次第に感情をコントロールする方法が身についてきたことを感じ始めるようになっていました。
練習の中での経験から、当日、自分自身の心をコントロールする方法として私が準備したことは、「一つのことに集中する」「一つの動作に心を込め淡々と行う」と、「自分のもっている力を、今、その時間にすべて出し切る」という三つのことでした。
「審査当日のでき具合はどうだったか?」と聞かれると、自分がどんな動きをしていたか、思い出そうとしても記憶があいまいでよく分かりません。ただ言えることは、常にこの三つのことを意識することで自分自身の感情をコントロールすることが出来たと思っています。緊張し、自分を見失ったりするのではないか、しんどさに負けてしまうのではないか、準備はしてきたものの出来ないのではないかと、ぎりぎりまで不安に思っていましたが、いつの間にか不安を感じていたことすら忘れていました。
●平常心…できない自分を認める
この審査で、自分自身の心を安定させること、つまり、「平常心」を保つことが出来る考え方が身に付いたことを確信しました。また、緑帯の時にあれだけ悩んでいたことも、今、振り返ってみると、あの時、師範が言って下さったように、練習の成果を少しずつではありますが、実感できるようになってきました。「出来ない自分を責めるのではなく、出来ない自分を認め、出来るようになる為に方法を考え努力を続けることが大切だ。」ということも自分自身の体験として学ぶことができました。
これから大切なことは、この審査に向けて実践してきたことや考え方を続けていくことだと考えています。まだ意識しないと出来ないこともあるので、人生の課題として自然と身に付くよう、常に、自分自身と向き合いながら生きて行きたいとも考えています。最後になりましたが、目のことを理解してくださった先生方や道場生の皆さん、又、昇段に向けて自分自身の様々な感情を出すことのできる環境がアスリート道場にあったこと、それらを全て受け入れて下さった先生方と出会えたことに深く感謝したいと思います。ありがとうございました。

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所属:南方道場
職業:主婦
入会年月日:2004年11月
有段者であるご主人の勧めで入会。高島、南方道場を中心に週2~3回の稽古に参加されています。継続的な努力により伝統型の試合では常に上位入賞を果たすなど、前向きな稽古姿勢は後輩の良きお手本になっています。またイベントではいつもスタッフとして協力していただき道場を支えてくれています。高島道場では職場での経験を活かして中高校生の指導も手伝ってもらっています。

~自分の内面と向き合った昇段審査~
●楽しみながら稽古…師範からの一言
緑帯になり二年経った頃、藤島師範に、「茶帯の審査を受けましょう。」と言われ、頭の中が真っ白になりとても驚いたことを今でもはっきり覚えています。私は今までに、二度、左目が見えなくなり、網膜剥離の手術をしていました。元々、網膜そのものが弱く、強い衝撃や振動、強い光などで網膜が破れやすい状態にあり、過去には、十年以上続けたハンドボールやスキーも、二度目の手術を境にきっぱりとやめてしまったこともあったからです。そのような理由もあり、茶帯以上の審査を受審するということは、私にとって非常に危険なことであり、皆無なこととして受け止めていました。
又、その頃の私は、昇級を目ざすということよりも、「目の悪い自分が再びスポーツが出来る」という満足感と喜びが先に立ち、自分のペースで楽しみながら道場に通っていたように思います。その為、師範から頂いたあの言葉に人並み以上に驚き、あの言葉が忘れることの出来ない一言になったのです。



●茶帯を目指して…上達を感じられない日々に悩む
私の中の茶帯以上の先輩方のイメージは、とても強く、道場に来られるとその場の空気が引き締まり、一緒に稽古をするだけで緊張し圧倒され、物怖じしない内面から滲み出る風格に自然と魅了されるような特別な存在でした。
そんな先輩方を見てきたので、審査を受けるからには中途半端な気持ちで受けることは出来ないと思うようになり、初めて帯の色を意識するようになりました。まず、ポイントを絞ったかなりの練習量が必要だと感じ、今までの数倍、練習量を増やしました。しかし、練習をしても自分のイメージ通り体が動かず、上達どころかむしろ後退しているようにさえ思え、出来ない自分が情けなく、腹立たしく、帰りの車の中で涙が止まらないことも多くありました。自分自身ではどうしようもないほど不安が募り、思い切って師範にその思いを伝えてみると、「その気持ちはよく分かる。僕も中川先生から、『今やってることがすぐに結果に繋がるとは限らない。数ヵ月経って結果が出る場合、一年経って結果が出る場合もある。』とよく言われていた。いつになるか分からないけど、結果に繋がる日が来るから、大丈夫です。」と言ってくださいました。その日から不安はあるものの、師範の言葉を心の支えにし、今出来ていることと出来ていないことを明確にし、時間がかかること意識すればすぐ直せることを整理し、今まで以上に意識的に練習に取り組むようにしました。



●昇段を目指して…自分の内面と向き合う
審査当日の三人組手では頭への衝撃がないように配慮してくださり、心配だった組手も何とか無事に終えることが出来ました。その後、再び師範から、「十二月に昇段審査を受けましょう。」という言葉を頂き、「昇段」という言葉に大きな戸惑いがあったものの、思い切って受審をすることにし、その日に向けて準備を始めました。
この昇段審査を受けるにあたり、テーマとして、「自分自身の内面と向き合う」ということを掲げることにしました。その理由の一つに、昇段レポートに「空手道と人間形成」という課題があったこと。もう一つの理由として、昇段審査の前に型試合があったことです。
レポートを書くにあたり、道場に入会した時から今までのことを振り返ってみると、初めての審査で「道場理念」を覚えたことを思い出しました。
●道場理念…自分自身にあてはめて
昇段審査を期に初心に戻り、この道場理念の意味を改めて考えてみようと思いました。 アスリート道場が大切にしている、「人としての正しい生き方を求めること」「人と社会の為に生きることの出来る高い人間性を養うこと」その具体的な考え方が解説の中に書かれており、自分自身をこの文章にあてはめてみることにより、自分自身と向き合うことを余儀なくされたように思います。
又、審査直前に型試合があり、自分を追い込むには良い機会だと考え、試合に出場することにしました。この試合では、誰かに勝ちたいとか、何位を目ざしたいとか、一切思うことがありませんでした。それよりも、「こんな型がしたい。」とか、「自分が出来ていない部分が、少しでも先生が教えてくださっているイメージに近づくようになりたい。」など、気が付けば自分自身に心が向いていたように思います。
これらの事柄から、「自分自身の内面と向き合う」ということが、自然なこととして昇段審査に向けてのテーマになったように思います。

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●4か月間の稽古と生活…感情のコントロール方法を学ぶ
それから約4ヶ月間、仕事、私生活、空手の練習とすべてに於いて常に自分自身と向き合う生活を意識して送るようにしました。感受性の強い私は人の言葉で心が揺れることが多く、ストレスも受けやすい生活を送っており、「このままではいけない。なんとかしたい。」と考えていました。
そんな中、審査当日のことを想像しながら練習を重ねていると、次第に感情をコントロールする方法が身についてきたことを感じ始めるようになっていました。
練習の中での経験から、当日、自分自身の心をコントロールする方法として私が準備したことは、「一つのことに集中する」「一つの動作に心を込め淡々と行う」と、「自分のもっている力を、今、その時間にすべて出し切る」という三つのことでした。
「審査当日のでき具合はどうだったか?」と聞かれると、自分がどんな動きをしていたか、思い出そうとしても記憶があいまいでよく分かりません。ただ言えることは、常にこの三つのことを意識することで自分自身の感情をコントロールすることが出来たと思っています。緊張し、自分を見失ったりするのではないか、しんどさに負けてしまうのではないか、準備はしてきたものの出来ないのではないかと、ぎりぎりまで不安に思っていましたが、いつの間にか不安を感じていたことすら忘れていました。
●平常心…できない自分を認める
この審査で、自分自身の心を安定させること、つまり、「平常心」を保つことが出来る考え方が身に付いたことを確信しました。また、緑帯の時にあれだけ悩んでいたことも、今、振り返ってみると、あの時、師範が言って下さったように、練習の成果を少しずつではありますが、実感できるようになってきました。「出来ない自分を責めるのではなく、出来ない自分を認め、出来るようになる為に方法を考え努力を続けることが大切だ。」ということも自分自身の体験として学ぶことができました。
これから大切なことは、この審査に向けて実践してきたことや考え方を続けていくことだと考えています。まだ意識しないと出来ないこともあるので、人生の課題として自然と身に付くよう、常に、自分自身と向き合いながら生きて行きたいとも考えています。最後になりましたが、目のことを理解してくださった先生方や道場生の皆さん、又、昇段に向けて自分自身の様々な感情を出すことのできる環境がアスリート道場にあったこと、それらを全て受け入れて下さった先生方と出会えたことに深く感謝したいと思います。ありがとうございました。

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